落ち葉の下で始まっている春の準備

一部の地域で絶滅が心配されているカタクリの花
一部の地域で絶滅が心配されているカタクリの花

厳冬期に入り、里山は静かなひとときを迎えています。しかし、落ち葉の下で、一足早く芽吹きの準備をしている植物たちがいるのをご存じでしょうか。スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral)と呼ばれる植物たちです。日本語では「春の儚いいのち」や「春の妖精」などと呼ばれます。

 

節分のころに花を咲かせるセツブンソウ、旧暦の正月ごろに咲くことから元日草とも呼ばれるフクジュソウ、かつては片栗粉の原料だったカタクリなどがよく知られています。

 

これらの植物がよく見られるのは雑木林の林床です。雑木林の主役であるコナラやクヌギが葉を落として越冬するため、冬から早春にかけて、地面にたっぷりと日差しが届くようになります。スプリング・エフェメラルたちは、その日差しを敏感に感じ取って真っ先に花を咲かせ、この世の春を謳歌するのです。

 

しかし、それは束の間のこと。花はすぐに散り、葉だけの姿になって急いで光合成を行います。そして頭上が木々の葉で覆われるころには地上から姿を消し、翌年の春までの長い時間を、地下茎や球根の姿で過ごすのです。

 

このスプリング・エフェメラルたちが見られるのも、よく手入れされた雑木林があってこそ。「春の妖精と出会うために、里山を保全する」。そんな活動も素敵だとは思いませんか。

 

20131月 中越パルプ工業社内報kami-cocoro 里山マイスターの「里山通信」vol.12を転載)